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コラム

バイオフィルムに注意!

バイオフィルムとは、強い膜に覆われた多種類の菌(数百種類)の集合体で、さまざまな細菌性の難治性疾患の原因になるものです。歯科に関しては、一般的に歯周病に関するものがよく知られています。歯と歯ぐきの境目に形成される菌の塊バイオフィルムは、強い膜によって外からの薬剤に対しても非常に強い抵抗力を持ち、歯にも強固に付着します。これによって膜に守られた状態でバイオフィルム内で強い毒素を出す細菌が繁殖し、歯肉や骨を攻撃します。バイオフィルムによる歯周病の予防に関しては、まずブラッシングや専用の器具を使用したスケーリングやルートプレーニング(歯石や根の表面、歯肉の病的部分の除去)によって機械的に除去することが第一選択となります。そしてバイオフィルムになりうる細菌をブラッシングや薬効によりきちんとコントロールする必要があります。バイオフィルムの中の細菌は、バイオフィルム内ではバランスがとれた状態で存在し、極端な症状を惹起することはあまりありませんが、バイオフィルムの膜が分解されることがあると、急性症状を引き起こし、全身の抵抗力の低下しているときや、妊娠時の胎盤ホルモンが産生されている時など、急激に病状を悪化させる事もあります。
酸による虫歯の原因等も、このバイオフィルムが関与していますが、例えば、歯痛等によってやむなく神経を取ったり、根の治療後に治療を中断するような事があると、骨の状態、抵抗力等によっても異なりますが、根の先にたまった細菌によってバイオフィルムが形成されてしまい著しく予後の悪い状態になってしまいます。(根の先のバイオフィルムは機械的に除去することは不可能に近いですから欧米では、ほとんどが抜歯の対象になってしまいます。)歯の激痛から開放されると「もう治ったか?」と思いがちですが、症状を確認しながら最後まで治療を行うことが非常に大切です。また、根の治療によって細菌を完全に除去することは不可能です。またいつかバイオフィルムが形成されてしまうかもしれません。ですから根の治療をしなければならない状況に至らないように、十分な予防が必要になってきます。
「親の小言と歯磨きは、後になって効いてくる。」(読み人知らず)だそうです・・・。
酒井 公洋・高見 紀子
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写真 酒井公洋