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コラム

今なぜ予防歯科か?

健康を維持・増進するためにも、おいしいものをおいしく食べ続けられる生活の質の向上のためにも、また美しい笑顔のためにも、虫歯にならない・歯周病を予防する=予防歯科が大切になってきています。ここ数年8020運動といって、「80歳で20本の歯(噛む事のできる)を残そう」という運動がさかんに広告されていますが、欧米では、2080、「20歳で80%の人が虫歯(処置歯も含む)がない」という状況になってきています。日本では20歳でまだ90%以上の人に虫歯(処置歯も含む)があります(厚労省H11年歯科疾患実態調査統計より)。欧米でのこのような虫歯の減少は、予防歯科の普及によって幼児期から個人個人のお口の状況(骨格・唾液の成分等遺伝的なものや生活習慣等)に合ったブラッシングをはじめとする口腔衛生指導や薬剤等による虫歯予防処置が十分になされてきたからにほかなりません。ごく初期の経過を観察できる虫歯は別にしても、進行性の病気である大部分の虫歯は、現在のところほとんど削って治療するしか方法がありません。また歯肉炎・歯周病に関しても軟らかい食事の普及や生活習慣等による疾患の低年齢化が危惧されています((5~14歳で約40%の人に何らかの歯肉炎の症状が、15~24歳で65%、45~54歳では約90%の人に症状があります(同じく厚労省統計より))。こういった意味で、現在のお口の中の状態や、その状態にあわせた清掃法等を知る上でも、定期健診・予防処置(プラークの除去)が非常に重要になってくるわけです。

虫歯や歯周病の原因であるプラークとは?・・・菌の集合体のことです。
1.食べかすを餌に菌が繁殖。
唾液中・舌・上あご等に存在している菌の繁殖です。

2.菌が集まってプラーク(菌塊)を形成します。(つまようじの先程度の量の中に約300種類、1億個の菌)

3.プラークが歯を溶かしたり、歯肉に炎症(発赤・腫脹・出血等)を起こします。
最近の調査では、このプラークと全身疾患との(嚥下性肺炎、心内膜炎、敗血症、糖尿病、胃潰瘍等)関連性も指摘されています。

4.さらにプラークが唾液中のカルシウムによって石灰化することによって歯石となり歯のまわりの骨にまで炎症がおよんでいきます。

以上のような順序で歯や歯の周りの組織を破壊していきます。

つまり虫歯や歯周病の直接的な原因となるプラーク(歯垢)をいかに除去するかが大切になってくるわけです(プラークコントロール)。また、間接的な原因としての喫煙、歯ぎしり、歯ならびやかみ合わせ、生活習慣、全身疾患との関連性を患者さん個人個人の状態に合わせてブラッシングをはじめお口の中の衛生状態の改善のために指導してまいりたいと思っております。しかしながら我々のできる事はほんとにごくわずかな事だけです。大部分は日々のブラッシング等患者さん自身の努力にかかってきます。そのためにも目的を持って楽しく日々の予防ができるように、そして歯や歯周組織、さらには全身の健康維持のためにも一緒にがんばってまいりましょう。 酒井 公洋

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虫歯ができたら金属をかぶせる、歯がぐらついたら抜いて入れ歯をはめるというのは、単なる処置。医療ではないんですよね。内科では予防医学の発想が一般にも受け入れられ、健康診断をうける人が多くなってきましたが、歯も同じ。歯が良いうちに診て、悪くしないようにチェックするのが本来の歯科医療なんです。」
「皆さん、歯医者に行くと痛い思いをするという先入観があって、なかなか行く気にはならないでしょうが、悪くなっていなければ、少しも痛いことはありません。虫歯や歯周病のチェックをして、歯の磨き方を指導。これだけで、歯の健康が保てるなら楽なものだと思います。」(酒井公洋談)異物を詰めることで歯の代用をさせるのは一時しのぎ。健康な歯を保つ手助けをするのが歯科医の役割というわけだ。
1993年ダカーポ5月5日号より抜粋