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コラム

イノベーションって??? 90年目を迎えて・・・。

最近、臨床研修指導に携わらせていただいていても、大学教育の影響もあるのかもしれませんが、教科書的な理想主義的な部分と、歯科医療の経営主義的?な部分の両極端ばかり目立ってきているように思えます。
そして「良い治療≠良い医療なのか?」などといったある意味哲学的な定義までも曖昧になってきてしまっています。
結果重視の教科書的な時間軸を無視した絶対治療が増えてきていることも影響しているのかもしれません。

ある患者さんに父親が、40年以上前に治療した歯があったとします。今まで無症状に経過してきました。しかし根の先に小さな病巣があります。私もこの患者さんを引き継ぎ20年近く診療し、患者さんの嗜好、生活習慣、抵抗力、体質、住所、仕事、来院手段から、趣味までだいたいの事は長いお付き合いの中で理解しています。
そして、今後の予後の予想や経過、上記等のすべての要素を考慮し、病巣のある歯を治療せずに経過を見ているといった状況が多くあります。
所謂、完治ではなく、治癒という状態です。(「治癒」の状態の連続もひとつの終了(完治)形態ではありますが。)
ところがもし、この患者さんを第三者的発想で新規に診療する事があったとすれば、この病巣のある歯を直ぐに治療する事になるかもしれません。
つまり、後者のような絶対治療主義、結果第一主義が増えてきているのも事実です。
(時間軸・経過を考慮しない結果であれば、仕方ない行為なのかもしれませんが・・・。)

もう二度と会わないかも知れない素通り的な診療や、二度と医院に通えない、通いたくない?(笑)状況であれば、結果としては、それでも良いのかもしれませんが、一生涯の患者さんとの人間関係として見てみるならば、とても淋しいものです。
診療というある意味2次元的な行為よりも、この時間軸の中にこそもっともっと大切な部分や想いが詰まっていると思います。

これからも、この時間軸や経過を大切に、この地この場所で、生涯患者さんとお付き合いできればと思っています。

以前のコラムにも書きましたが、「温故知新」という言葉が好きです。
クラシックカメラやアナログ的なmonoも好きなので、懐古主義・趣味のように思われることもありますが、決してそうではありません。
古きを訪ねるということは、歴史を振り返ることもさることながら、その時代から現代までの時間の軸・経過に重要な意味があるのではないでしょうか。今、巷では「イノベーション」という言葉に代表されるような、いきなり「取って出し」の発想が流行しています。一見、斬新な発想のように思われても、流行の服や音楽のように時間とともに消費されてしまうことがたくさんあります。まったく別視点の新しい発想も大切ですが、長い命を持った基本・基礎を古いものからさらに導き出していくことこそが、温故知新の大前提なのではないでしょうか・・・。じっくりコトコト煮詰めてブレなく進んで行けるでしょうか・・・。

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