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コラム

貴婦人

ゴールデンウイーク期間中に、NHKで蒸気機関車の復活をテーマにした番組を放送していました。C-57型という機関車でしたが、別名、走る「貴婦人」と呼ばれていたそうです。私も幼少期は、乗り物関係には人並みに興味がありましたから、この「貴婦人」の事は知っていましたし、大きなプラモデルも作製したことがあります。一般的(?)な少年期でしたので鉄道を始め、航空機・船舶等にも当時はそこそこ興味があり、中学生時代には、東京駅、羽田空港や横浜大桟橋にも友人達とよく写真を撮りに出かけて行きました。
どういうわけか私の最も好みの航空機(DC-8)や船(QE-2)にはC-57型と同様に、「貴婦人」という呼称がついていました。蒸気機関車は別としても、現在の航空機、船舶にはない「ゾクッ」とするような美しさを持ち合わせています。
しかしながら、機能を追及した結果としての形態が、「貴婦人」の呼称となっているわけです。
C-57であれば、ボイラーの形状や高速走行のための車輪の大きさ、DC-8(-62)は、当時の基本的な機体の幅や主翼の形態から割り出した、最大限の機体の延長に伴った結果の流線美になったわけです。
QE-2のもっとも美しいと言われる部分であるスリムな船体にも理由があります。当時の大型客船の中でもきわめてスリムな船体幅32メートルの理由は、30メートル強の幅のパナマ運河やスエズ運河を通過するための限界サイズであったわけで、現在の娯楽志向の大型客船ではなく、当時の移動手段としての船舶利用にあたり大陸間移動のための大幅な時間短縮によって他の大型客船に対して大きなアドバンテージになったわけです。
このように機能的な条件の集大成による機能美というものが、結果的に形態的な美しさに反映され、トータルな意味での美しさを「貴婦人」と称しているのではないかと思います。「貴婦人」には「貴婦人」たる所以があるわけです。
ご存知の方も多いと思われますが、音楽CD(結果的にDVDも)の直径12センチというサイズも、ベートーベンの第九を収録するための時間(74分)から計算され割り出された機能的なサイズだったわけです。
酒井 公洋 (資料:ウィキペディアより)