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コラム

アナログ回帰(回顧)

昨今のデジタル技術の凄まじい進歩には目を見張るものがあります。
当医院内においても、カルテをはじめ、デジタルレントゲン、レーザーや診療台、各種モニター等のデジタル表示のついた機械器具類。今ではほとんどが、デジタル技術によって管理されています。ミスのない安全技術・管理のための進歩はおおいに歓迎であります。飛行機も、離陸さえしてしまえば着陸、停止に至るまで全自動で行うことができる時代です。
と同時に、このような張り詰めた無味乾燥なデジタル機器に囲まれていると、仕事以外では、アナログ的なものにも「ホッ」と感じることが多くなってきているのも事実です。デジタルの緊張感、アナログの開放感といったところでしょうか。1日でも新しいほうが良い品とされるデジタル機器、古ければ古いほど味が出るといわれるアナログ機器。感情の入る余地のないこんな時代だからこそアナログを見直してみても良いのではないでしょうか。私の中では、アナログは、淘汰されるものではなく、アナログこそがデジタル時代の息抜きの役目になっているのかもしれません。理論的、データ的には、まったくデジタルとは比較するまでもないのですが、アナログ機器類を操るには、作法やしきたり、「間」といたものが必要になってきます。こういった時間の贅沢な使い方や、めんどうくさい行為(奥ゆかしい行為とも言えるかもしれませんが・・・)が張り詰めた心を穏やかにしてくれる気がします。
レコードの雑音もまた「味」なり・・・。
(20世紀半ば、ハワイのとあるホテルの庭の大きなバニヤンの木の下から全米本土に向けてラジオ放送「ハワイ・コールス」という音楽番組が放送されました。当時のアナログの技術では、ハワイからの距離のある本土で聞いたラジオはひどい雑音だらけ。しかしリスナーのほとんどの人は、「なんてハワイらしいラジオ番組なのだ!」と思ったそうです。その「雑音まみれの音楽」のことを、「波の音とミックスした素晴らしい音楽」だと勘違いしたのです。それ以後、音楽と波の音を意図的にミックスした音楽が流行したそうです。今も・・・) 文・写真 酒井 公洋
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