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コラム

歯に詰める治療(充填治療)の主流になりつつあるMIについて

ここ数年の歯科材料の進歩には目覚しいものがあります。特に接着(プラスティックの充填やセラミックの接着等)の分野に関しては、1980年代以降急速に進歩し毎月のように新しい材料が開発されてきています。接着技術の飛躍的な向上は、以前のようにプラスティックと歯の境界面付近からの細菌による感染(以前はこれが多くプラスティック等の充填治療の足かせにもなっていました)や脱離ということもほとんど考えなくてすむようになってきました。これらの進歩が、今、全世界的な潮流となりつつある「ダウンサイジング」(歯を削除する量の減少)、「MI:ミニマル・インターベンション(FDI(国際歯科連盟)によって2000年に提唱された予防的な概念)」(歯に対する最小限の侵襲)というものにつながってきています。今までの金属の詰め物等の治療では、虫歯の治療は、虫歯を取る事と同時に予防的に健康な部分を含めて比較的多く削ることがほとんどでした。そのため、結果的に治療のたびにどんどん歯の健康な部分が失われていき、最終的には神経を取ったり(神経を取ったあとは?・・・Q&A)、抜歯に至るというケースも多くありましたが、接着技術の進歩によって、少しでもこのサイクルを先延ばしにできるような状況になってきています。つまり、MIは、「小さく確実に虫歯を取って確実に充填する治療」ということになります。そのために、最近では、手を使って虫歯を少しずつ確実に削り取る小さな耳掻きのような道具(スプーンエキスカベーター:下写真)や、一般的な削る効率の良い速い回転のいわゆるエアータービンではなく、その10分の1から20分の1位の回転速度のモーターを使った切削器具の使用も多く見られます。虫歯を検知する薬とあわせてこれらの器械・器具はMIには欠かせないものになってきています。
またMIによる治療によって金属ではなく(部位や面積によっては金属にもなります)結果的に審美性の良好な充填物が入ることになり、見た目の美しさも同時に得られるようになります。
FDIでは、MIによる虫歯治療の原則として、初期虫歯の再石灰化・虫歯菌の減少と虫歯の拡大の防止・必要最小限の虫歯除去と充填治療・再治療よりも壊れたり欠けた部分のみの補修による充填治療・術後の管理(確実な定期健診・経過観察)と二次虫歯の予防等をあげていますが、今後このMIという考え方は、予防歯科とともに歯科治療の中心的な存在になっていくものと思われます。
酒井 公洋
P1030721-1.jpg スプーンエキスカベーター